椎名林檎 new single「カーネーション」2011.11.2(水)release!

インタビュー

ここ最近、動画配信サイト出身のアーティストが世に多く出て来ているが、今回のサカモト教授もそう言われている一人。だが実は、京都のロックフェス「ボロフェスタ」でのステージ経験もあるアーティストであったことはご存じだろうか。ゲーム機を頭に載せて演奏するライブスタイルは、観る者多くの目を惹きつける。今回のインタビューでは、"サカモト教授"の誕生から最新作『サカモト教授の8bitジュークボックス』に関して、そして2012年の野望まで、"サカモト教授"の全てを知ってもらえる、内容盛りだくさんな取材となった。(文/musicpool事務局)

まずは音楽を始めたルーツを教えて頂けますか?

サカモト教授(以下、サカモト) 最初は、4歳の時に始めたクラシックピアノですね。自宅にピアノがあって姉が習っていたので、産まれた時からピアノの音を聴いて育ちました。そして、当時流行っていた"ファミコン"の曲を弾けるようになっていったんです。14歳から独学で勉強するようになって、最終的には"ゆーきゃん"というアーティストの鍵盤サポートをしていました。当時出演した"ボロフェスタ"のライブ後の空き時間に、ステージ上でゲーム音楽を弾いたらお客さんがすごく盛り上がってくれて。これはパフォーマンスとして確立させていこう、と思いましたね。

なるほど。当時、ゲーム音楽はどんな曲を弾いていましたか?

サカモト ドラクエ(ドラゴンクエスト)とかFF(ファイナルファンタジー)とかグラディウス、スーパーマリオなど、有名どころは全部弾いていましたね。

小学生の時は、将来音楽家になりたいと思っていましたか?

サカモト 小学生のころはないですね。音楽一本でやっていこうと思ったのはここ数年で、"サカモト教授"として本格的に活動し始めてからです。

ゲーム音楽以外で影響受けたアーティストはいますか?

サカモト 鍵盤プレイヤーとしては、チック・コリアやハービー・ハンコックなどのジャズピアニストを聴いていました。いろいろなミュージシャンと音で会話して場を盛り上げられるようなパフォーマーになりたかったので、学生時代にジャズピアノと出会ったのは自分にとっては大きな転換点でしたね。

ジャズの中でもどういったタイプでしたか?

サカモト 大学時代に先輩から古き良き音楽をいろいろとお勧めされて、60~70年代のビル・エヴァンス、キース・ジャレット、ウェザー・リポートとかも聴いていました。なので、どちらかというと自分はフュージョン寄りなのかもしれませんね。

クラシックピアノやジャズピアノは、今の活動にフィードバックする部分はありますか?

サカモト ありますね。ニコニコ生放送(以下、ニコ生)やライブ活動の中でいろいろなアーティストとコラボするようになって。そういう時に、ジャズで培った"即興力"や"応用力"、クラシックで培った"テクニック"は今でも自分の土台になっていますね。

ニコ生などの動画サイトは大きなターニングポイントだったと思うのですが、最初に投稿された時は覚えていますか?

サカモト コメントや感想がリアルタイムで画面に流れるので、革新的だなと思いましたね。自分のパフォーマンスに対して、時間軸の違う人達の評価が一度にリアルタイムに見られるのが今までにない世界だなと思いました。

投稿される前は、ニコニコ動画(以下、ニコ動)とかは見ていましたか?

サカモト 見ていましたよ。ニコ動の黎明期からずっとみていて。面白いツールがあるんだなと思っていました。

現在、ニコ動で話題になっているアーティストはたくさんいますが、当時からチェックしていましたか?

サカモト 「演奏してみた」・「歌ってみた」カテゴリーとかは結構見ていました。でも当時活動していたアーティストは今あまり活動していないんですよね。"ヒャダイン"くらいかな。

ニコ動経由で繋がったアーティストはいらっしゃいますか?

サカモト バイオリンでゲーム音楽を弾く"てっぺい先生"とかですかね。もともと絡みはなかったんですけど、自分の方から「ライブしませんか」と声をかけて。名前は知っている同士だったので、すぐに意気投合しましたね。

リアルタイムに画面に流れるコメントで、"鍛えられること"はありますか?

サカモト 厳しいコメントも容赦なく飛んでくるので、最初は驚きましたけどね。笑 でも、悪意あるコメントと、自分のことを思って伝えてくれているコメントの判別が徐々に分かるようになってきて。受け入れるところは、今でもしっかり取り入れていますね。毎週生放送やっていると、そういうことは絶えないので。

今作はJ-POPカバーですが、"J-POP"のアイデアが浮かんだ時期と、その経緯を教えて頂けますか?

サカモト もともと自分はゲーム音楽専門だったんですけど、今年(2011年)の6月に"ほぼ日刊イトイ新聞"さんでライブをさせて頂くことになって。その時にJ-POPの名曲をピコピコアレンジで弾いたところ、結構反響が良かったんです。坂本美雨さんとの"サカモト兄弟"も評判良かったので、それまでゲーム音楽だけだったのですが、この路線でのアウトプット(成果物)を出した方がいいのではないかと。将来的に、もう少し自分の幅も広げて行きたいとは思っていました。

今作の収録曲選定は、どのような基準ですか?

サカモト やはり自分の思い入れのある楽曲ですね。小学生~中学くらいまでの時期です。

一番古いのはどの楽曲になりますか?

サカモト BOOWYの「ONLY YOU」だと思います。

それはいわゆるバンドブームの時ですよね。サカモトさんは、バンドブームを客観的にどのように感じていましたか?

サカモト 当時は"ソロ"でクラシックピアノをやっていたので、あまりバンドとして"チーム"で何か音楽をやるっていう視点がなかったですね。世間的なバンドブームというよりは、単純に自分がクラシックピアノしか見えていない時期に、先輩達がバンドをやっていたのがカッコイイなと思ってバンドを組みました。9歳から19歳まで10年間ドラムもやっていたので。

今回の収録曲で、共通点は何かありますか?

サカモト 自分が"思いっきり歌った曲"ですね。このメドレーを通して、聴いてくれる人達が歌えるような感じで作ったというのはあります。

ご自身の耳を分析すると、どういうところが自分の好みのポイントになっていると思いますか?

サカモト 自分はよく"チップチューンの人"と言われるんですけど、正しくはチップチューンではないんですよ。自分の場合はチップチューンに似た音をシンセで作って音作りをしているんですけど、全曲を通してメロディーや特徴的なフレーズに関しては、出来るだけファミコンぽい音で作るようにしています。「ゲーム音」はまだ一般的ではないと思うんです。自分の場合は、もっと広い範囲で自分の曲を受け入れて欲しいし、受け入れられやすい音作りにしようと思って。ストレートにチップチューンというよりは、クラブでかかっていてもおかしくないような音の広がりを持たせようとしたのは、全曲通してありますね。

クラブミュージックとして参考としているアーティストはいらっしゃいますか?

サカモト 自分の見た目的にも、ダフトパンクですかね。笑

最近気になっている音楽はありますか?

サカモト 自分は最新というよりはレトロ思考なので、最近買ったアルバムだとクラフトワークとかですね。自分がもともとゲーム音楽で"レトロな立ち位置"にいることもあるんですけど、どちらかというと最新のクラブ音楽よりは、もう少し昔のエレクトロニカやテクノ世代の音の方が自分のサウンド思考には強いかもしれませんね。

"ゲームミュージックを作るモード"と"J-POPを作るモード"で、違う点はどういう部分ですか?

サカモト ゲーム音楽は、音楽そのものが目的で作られたものではなく、ゲームの中で演出をする為に作られたものなので、"シーン"を重視して作るんですけど、J-POPはもともと歌ものなので、"メロディーや歌詞の世界観"を重視して音作りをするという点では違いますね。

これからチャレンジしてみたいことや、使ってみたい音色はありますか?

サカモト あまり生音を使わないので、これからはどんどん取り入れていきたいですね。

作業はご自宅ですか?

サカモト 基本的には全部自宅ですね。ミックスまでは全て自分で行っていますね。マスタリングの段階で初めてスタジオに入る感じです。

ご自宅での作業で一番気にかける作業はどこになりますか?

サカモト 結構いろいろな音色を使っているので、ミキシングの部分は特に気を使っていますね。EQの調整をして、一つ一つの音がハッキリ出るようにしています。

作品を作る上での苦労であったり、難産な曲はあまりない方ですか?

サカモト いや、ありますよ。今回でいえば、"ノンストップメドレー"だったので、全てキレイに繋げなければならなかった所ですね。原曲のキーやテンポ感を出来るだけ変えずに繋げるのが、まるでパズルのようになっていて。そのパズルを組み合わせるのに今回はとても苦労しましたね。

今作は"DJミックス"のような感覚に近いと思ったんですが、ご自身ではいかがですか?

サカモト 実は、DJの世界のことはあまり知らないんですよね。クラブにはよく遊びに行きますけど、どのような繋ぎをすれば盛り上がるとか、そのような感覚は自分にはないんです。ただ、今作の前に同じようなメドレーを作っているんですけど、その繋ぎの評価が高くて。なので、今回も怖がらずに自分が"気持ち良い"と思った繋ぎをしましたね。

これから先の企画や、アルバムの構想はなにか考えていますか?

サカモト やはりオリジナルで評価されたい、という気持ちはあります。もちろんゲーム音楽も続けていければと思っていますが、最終的にはオリジナルで勝負していかなければならないと思っています。あとはライブがまだゲーム音楽がほとんどなので、最初から最後までオリジナル楽曲でライブが出来るようにすることが次の課題ですね。徐々に、"ゲーム音楽"から"オリジナル"としてのサカモト教授にシフトしていきたいなと考えています。

坂本美雨さんとユニットを組んでいましたが、今後一緒に組んでみたい人はいますか?

サカモト ボーカリストさんとのセッションはやってみたいですね。坂本美雨さんももちろんですけど、この前、AAAの日高くんとニコ生に出させてもらったので、例えば日高くんのラップと合わせるとか、チャレンジしてみたいですね。

最後に、"サカモト教授"の2012年の野望と展望をお聞かせください!

サカモト 来年(2012年)は国内と並行して、海外での活動も視野に入れたいなと考えています。自分のパフォーマンスは"インスト"であり"ゲーム音楽"でもあるので、そのまま海外に持って行けるのではないかと感じていて。海外メディアにも自分の記事が取り上げられたり、海外のチップチューンレーベルにも気に入ってもらえているので、徐々にではありますが、海外での活動は意識しています。来年は英語を喋って海外向けに生放送をしたり、あとは実際に海外へ行ってライブをしたいなと思っています。世界への進出が来年の野望ですね。