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【Concert Report!】 宇多田ヒカル

【musicpool事務局】 (2010年12月20日 22時08分)


【musicpool Concert Report!】 宇多田ヒカル


宇多田ヒカル「WILD LIFE」
2010年12月9日(木) @横浜アリーナ


 シンガー・ソングライターとしての顔だけではなく、宇多田ヒカルというひとりの人間が持つ魅力を最大限に感じられるステージだった。彼女の人間性や人柄が色濃く表れた場面を思い出すたびに、今もなお光に似た温かさがググっと込み上げてくる。


 今年の8月9日付けの日記で、音楽活動一時休止という大きな決断を発表。これまで長い期間作品を出さなかった時期もあったからか、宣言をしての休止に余計に驚きを隠すことができなかった。今回12月8日と9日に開催された横浜アリーナコンサート『WILD LIFE』は、彼女にとって一時活動休止前のラストコンサートとなる。もちろん両日とも即日ソールドアウトで、各日1万4000人ともなる観客が集結。


 初日となる8日は『WILD LIFE ライブ・ビューイングinシアター』と題し、全国64ヵ所の映画館のスクリーンにて生中継も実施された。さらには海外ファンからのリクエストにも応え、動画配信サイト『Ustream』による全世界への配信も。なんと視聴者数は34万5000人で、同時間帯の全世界ナンバーワンを記録したという。彼女が世界中の人々にどれほど期待され、どれほど求められているのか。驚異的な記録を目にし、改めてズバ抜けた支持度を痛感させられた。



 そして2日目にして、最終日となるこの日。まずは中央に設置された円形ステージ上部のスクリーンから、「ぼくはくま」でおなじみのくまの映像が。しばらくコンサートを見られなくなるということで、こちら側も自然と肩に力が入っていたのだろう。彼女自身がひっそり映像の中に現れるシーンに、会場の空気がすーっと和らいでいくのが分かった。映像が終わると、白のドレスをまとった彼女がステージの中央に。上下左右の照明の明かりが彼女を照らす中、「Goodbye Happiness」や「traveling」を紡いでいく。スタートから詞の一つひとつを全力で歌う彼女に、体の全身でなにもかも受け止めたいと思わずにはいられなかった。


“実は今日がデビューから12年となる記念日です。ちょうど12年前の今日、こんなに大勢の人とコンサートができるなんて想像もしていなかった。本当に幸せ者だと思います”。そんな彼女の言葉にふと周りを見渡すと、男女問わず幅広い年代のオーディエンスが目に入ってくる。楽曲を聞いてもそう昔には感じられないものの、ここに集まった様々な人たちを見ると、月日の長さを思わず実感させられてしまう。会場にはデビュー時を振り返りながら、聞いていた人も多くいたはず。


 中盤頃に披露された「SAKURAドロップス」では、歌だけではなくピアノも。正直放たれるパワーや詞の力が大きすぎて、ただ視線を逸らさずにいるだけで精一杯だった。やはり彼女の歌には、希望の中にもじんわり切なさが伝わってくる。しかも楽曲に寄り添う8名によるストリングスの音色にも、どんどん涙腺がゆるんでしまうのだ。この曲を歌い切るとステージから降下し、オレンジのワンピースにチェンジして再登場。今度はギターとベース、ドラムのバンド陣を引き連れ、「Passion」を歌い上げていく。ここからは手拍子をするときもあれば、拳を掲げてステージの周りを歩くといった力強さを見せることも。幾度となく穏やかな笑顔と、少し寂しげな表情が交差する彼女。まさに、12年間のすべてを噛み締めているようだった。



 本編ラストに入る前のMCでは、何度か言葉を詰まらせる場面が。それでもオーディエンスからの“待っているよー”という声には、キチンと“信じている”という一言を。こんなやりとりを目の前にすると、どうガマンしても寂しさが浮かんできてしまう。そして“世界中にはいろんな人がいるけど、ふだんの生活の中で感じていることは同じなんじゃないかなって。そう思って作った曲です”と伝え、ラストとなる「虹色バス」を披露。次第に歌に込められた、“日々生まれる感情はみんな同じ”という気持ちが沸き上がってくる。もちろん自分以外の人の生活を見ることはできないし、ときには理解し合えないことも確かにある。けれど世界中のすべての人を、本当はもっと身近に捉えてもいいのかもしれない。


 アンコールを求める声と盛大なハンド・クラップの音が充満し始めると、この日でもっともラフなTシャツとジーパンというスタイルで再び舞台に。自身とギタリストのアコギ、ストリングスを交えて、The Beatlesのカバー「Across the Universe」を弾き語りで演奏してくれた。次いでキーボードが登場し、『ペプシネックス』のCMソングにもなっている「Can’t Wait ‘Til Christmas」へ。会場には“大切な人を大切にする”という純粋な歌詞とともに、愛情がめいっぱい注がれていく。どこまでも自分に正直で、まっすぐな気持ちをぶつけてきてくれる彼女。ひとりの人としての優しさや強さも、コンサートを通して教えてくれた。


「自分を大切にできないのに、他の人を大切にできないなって。いろんな出会いがあって気付くことができた。だから、みんなも自分を大切にしてほしい」。アンコールのラスト曲に入る前にそう言い放ち、最後を15歳のときに完成した「time will tell」で締めくくってくれた。席を立つのが惜しく余韻に浸っていると、「嵐の女神」がBGMに。ほかにもその場を離れず、多くの観客が聴き入っている。きっと誰もが“早く復帰した彼女に会いたい”と願っていたのだろう。この先も“自分を大切に”という言葉を忘れることなく、もう一度ステージで見られる日を待ち続けたい。(文/松坂 愛)


<12/9(木) Set List>


01. Goodbye Happiness
02. traveling
03. テイク 5
04. Prisoner Of Love
05. COLORS
06. Letters
07. Hymne à l’amour ~愛のアンセム~
08. SAKURAドロップス
09. Passion
10. BLUE
11. Show Me Love (Not A Dream)
12. Stay Gold
13. ぼくはくま
14. Automatic
15. First Love
16. Flavor Of Life -Ballad Version-
17. Beautiful World
18. 光
19. 虹色バス
<ENCORE>
20. Across the Universe  (※The Beatles カヴァー)
21. Can’t Wait ‘Til Christmas
22. time will tell



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